第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の
向上を図ることを目的とする。
(国民の責務)
第二条 国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。
第二章 基本方針等
(基本方針)
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
六として 食生活、運動、休養、飲酒、喫煙、歯の健康の保持その他の生活習慣に関する正しい知識の普及に関する事項
第五章
第二節 受動喫煙の防止
第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を
講ずるように努めなければならない。
解説
1.対象となる場所について
「その他」の中に下記が含まれると解釈します。
A.遊技場(ゲームセンター、パチンコ・スロット店、ビリヤード場、ボウリング場、麻雀・囲碁・将棋店、公園、遊園地、カラオケ店)
B.スポーツ施設(ゴルフ場、テニス場、公営競技場など)
C.式場(結婚式場、結婚式披露宴会場、葬儀場、その他各種宴会場など)
D.その他の店舗(ホテル・旅館、銀行、理容・美容店、エステティックサロン、マッサージ店、接骨院、鍼灸院、日焼けサロン、コインランドリー、ガソリンスタンド、銭湯・温泉等入浴施設、休息施設、風俗店、占い店など)
E.交通機関(電車、バス、タクシー、船舶、航空機、駅、バス停、タクシー乗り場、港、空港など)
F.各種施設の待合所・待合席、応接室、会議室、休憩室、洗面所、廊下、階段、出入口
この法律の意義
妊婦はタバコを吸わないのに、まわりの人のタバコ(受動喫煙)で未熟児や脳障害、心臓病、流産、死産することなどが明らかになりました。この度この受動喫煙を防止するための法律(健康増進法第25条)が制定されました。この法律は平成15年5月1日から施行されます。
この法律は、多数の人が集まる所、つまり一般の飲食店でも、他の客や店員に受動喫煙をさせないように勧告しています。この法律は今まで曖昧だった受動喫煙の被害の責任を、タバコを
吸う人ではなく、その場所を管理する事業主としたのです。(平成14年8月2日官報掲載)
例えば、妊婦が、禁煙になっていない飲食店や百貨店、役所等を訪れた後、体調をくずし、その後流産して胎盤や胎児の血液等から、タバコの煙に含まれるニコチンを取り入れて体内で代謝されたときにできているコチニンが検出されたら、健康増進法第25条の法律を順守していなかった事業所は、その被害者から責任を追求される可能性があります。
また、空気清浄機は臭いをとるだけで、タバコの有害物質はほとんど除去できません。妊婦や幼児を連れた親や、身体に問題のある人などは、空気清浄機があるからと決して過信せずに、そこがタバコの煙が十分に換気されている場所であるかどうかを確認してから入るようにしてください。
喫煙家はこれを機会に自分のためにもタバコは止めましょう。
タバコ1本の煙には約40種類の発ガン物質(0.5〜1mg)が含まれており、1日3時間以上禁煙できない空間(受動喫煙)にいる女性の子宮頸部からは、タバコ由来の発ガン物質が検出されています。そのため、子宮頸部ガンのリスクは3.4倍に増加することが報告されました。
千代田区の路上喫煙について
完全な禁煙の学校に通っているタバコを吸わない家庭の子どもの尿検査をすると、タバコ由来のコチニンが検出されることがあります。これは、通学途中でタバコの煙を吸い込んだのが原因です。したがって、東京都交通局はバス停の禁煙を呼びかけ、千代田区では路上でも受動喫煙を防止しました。
喫煙者の方へ
農薬に発ガン性が認められ「この農薬を使っても、年1000〜2000人しか死亡しませんよ」と言って使用されたら誰だって怒るでしょう。誰だってガンになりたくありません。しかし、日本では、他人のタバコで1000〜2000人がガンになっていると推定されます。ご理解とご協力をお願いします。
この法律の背景
飲食店で働く店員が客の吸うタバコが原因で咽頭ガンになり、銀行の行員が、銀行内が禁煙でなかったため気管支喘息で死亡し、アメリカの子供は、大人のタバコのせいで年間340万人が中耳炎になり、180万人が気管支喘息、4万6千人が低体重出産になりました。
日本の国会では、このような報告書なども検討した結果、受動喫煙を防止する為の法律が必要と判断され、受動喫煙を防止する為の法律(健康増遣法第25条)が成立しました。
この法律は、今まで曖昧だった受動喫煙の被害を、タバコを吸う人ではなくその場所を管理する者としたのです。
従ってこの法律の対象となる飲食店、学校、役所、百貨店、事務所等の多数の人が集まる場所を管理者は、この法律が施行される平成15年5月1日以降は、禁煙や煙の漏れない完全な分煙になっていなかった場合、タバコを吸わない職員や客がDNA鑑定の結果、タバコ由来のガンになったり、その他の健康被害を受けたりした場合には、被害者や遺族からその責任を追求される恐れがあります。
また、タバコを吸ったからといってすぐにはガンにはなりません。したがって禁煙になっていない職場で、5年勤務した後、退職し、10年後にタバコ由来のガンになった場合には、勤務した年数や状況に応じて損害賠償の一部を請求される可能性もあります。
今後、この法律に該当する事業主の方は、職員やその他の人から健康被害を受けたと、損害賠償を請求されないように注意して下さい。
喫煙家の方もこれを機会に、あなたの健康の為に禁煙されるのをお勧めします。
この法律(平成14年8月2日官報掲載)の詳細は厚生労働省のホームページでも見る事が出来ます。
受動喫煙を受けたか否かの鑑定は、尿検査(ニコチンの代謝産物であるコチニンを検出)で簡単に検査が可能です。
厚生労働省健康増進法のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/03/tp0326-4.html