人間には聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚の五感と呼ばれる感覚機能があり、これらの感覚は相互に影響を及ぼし合います。そのうち、味覚と嗅覚は飲食時に同時に働くとともに両者の間で相互作用があることは日常生活で実感するところだと思います。

その1つが「風味障害」で、味覚自体に異常がないにも関わらず嗅覚障害が原因で生じる味覚障害のことを言います。感冒後に嗅覚が鈍ることはよく経験される感冒後嗅覚障害と呼ばれますが、このうちの30%に風味障害を起こすことが報告されています。

人が味を感じる際には、口に入れた飲食物が口から鼻の奥(鼻腔)を経由して嗅細胞に到達する匂いの情報と、味覚細胞からの情報が脳内で統合されて最終的に認識されることになります。例えば、松茸の香りがなければ松茸ごはんのおいしさは激減するということです。

このように味覚と嗅覚の情報が相互作用を生じるのは、両知覚の情報が互いにオーバーラップして入力される中枢部位があり、相乗効果が生じるためです。風味障害の治療は、嗅覚障害が原因ですからその治療を行えば風味障害も改善しますが、全快までに1年~2年もかかることもあるようです。