1993年、「歯周病は第6の糖尿病性合併症」と定義されました。その意味合いは、糖尿病患者には歯周病が多いこと、歯周病の発症頻度や重症度は血糖コントロール状態や糖尿病罹病年数と関連しているということです。

歯周病による慢性炎症は、歯周ポケットが5~6mmあったと仮定すると、口腔全体では炎症巣の面積が手のひらサイズにも及ぶため、炎症の結果生じるインスリン抵抗性により血糖値を悪化させます。実際、糖尿病であると糖尿病でない人に比べて歯周病の新規発症が2.6倍高率です。さらに、血糖コントロールが不良であると歯周病のリスクは一層高まり、糖尿病の罹病年数が5年を超えると歯周病は悪化します。

逆に、糖尿病患者の歯周病治療によってHb(ヘモグロビン)A1c値が最大1%前後改善したと報告されています。その機序は、抗菌薬を主体とした治療により歯周炎に由来するTNF-αの産生量が低下するためにインスリン抵抗性が改善する結果と考えられています。

その他、糖尿病患者では歯周病が重症になるほど、将来的に虚血性心疾患あるいは糖尿病性腎症による死亡例が増加するとされます。これは、歯周病による軽度の炎症がインスリン抵抗性等の虚血性心疾患の危険因子を介して動脈硬化の促進因子として作用している可能性が考えられます。

最後に、歯周病を予防するためには、虫歯も歯周病も感染症なので、ブラッシングにより口中の常に居る細菌を発症しないレベルに抑えておくことがポイントです。特に寝ている間にこれら感染症になり易いため、寝る前によく磨くことが大事です。