最近になり家庭血圧が注目されていますが、その最大の理由は、外来診療や健診で測定された血圧よりも心血管病予後とよく相関することがわかってきたためです。つまり、家庭血圧の方が「心血管疾患による死亡」や「脳卒中発症」の予測にすぐれているということです。さらに、外来での血圧が良好でも、家庭血圧が高いと心血管疾患が発症しやすいということもあります。その他の効用として、家庭血圧を含めて治療した群の方が、上と下の血圧ともにコントロール状態が良かったと報告されています。

以上のように、家庭血圧の測定は、その利点を期待できますが、一方で、家庭血圧に関するエビデンス(証拠)の蓄積は不十分であり、現時点では診療室血圧と家庭血圧の何れをも把握しつつ、個別に治療方針を検討することが妥当と考えられています。現在、家庭血圧は135/85mmHgが高血圧、125/80mmHgが正常血圧の基準値ですが、降圧目標値は未だ定められていません。その他、通常昼間に比べて夜間就寝中の血圧は10~20%程度低下しますが、夜間に血圧が下がらない人では心血管疾患が起こり易いことが明らかとなっています。このため最近では、夜間睡眠中の血圧を自動的に測定できる家庭血圧計も開発され、実際に臨床応用され始めています。