ラグビー、ボクシングや柔道などのいわゆるコンタクトスポーツでは、頭部打撲による脳振とうや急性硬膜下血腫のリスクが存在し、急性硬膜下血腫による死亡率は55%にも達します。2012年度より中学校保健体育で武道が必修化され、66%の学校が柔道を選択し柔道人口が増加するのは必至です。すでに現在日本では年間4人の割合で柔道による死亡事故が発生しています。

コンタクトスポーツで急性硬膜下血腫が生じる原因には、「打撲することにより脳が揺さぶられる」場合と、「打撲しなくても頭蓋骨と脳に大きなずれを生じる」場合(加速損傷)があり、何れの場合も結果として脳表面の静脈(架橋静脈)が限界を超えて引っ張られて破れることで出血に至ります。

ある報告によると、中高生の柔道による死亡事故例では、大外刈りと背負い投げの2つの技によるものが多く、共に頭部に回転性の衝撃が加わることによる加速損傷が原因と考えられます。つまり、頭部打撲が無ければ安全ということにはなりません。

今後の安全対策としては、指導者に対するライセンス制度導入はもちろん、柔道にかかわる者すべてに対する医学的知識の啓蒙が必要です。