COPD(シー・オー・ピー・ディ-)という病名を御存知ですか。日本語では慢性閉塞性肺疾患といって、日本人の主な死因の中でも常に10位前後に位置する重要な疾患です。日本呼吸器学会では概略で「COPDとは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示し進行性である。臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする。」と規定しています。肺気腫と呼ばれていた疾患と慢性気管支炎と呼ばれていた疾患が、喫煙を原因とする事が多く、両者が殆どの場合で合併するため総称してCOPDとなりました。

原因は長期間の喫煙で、男性に多く中年以降に発症します。他には大気汚染や有毒ガスなどが発症の原因となります。症状は咳、痰、運動時の息切れ、喘鳴などで少しの動作でも苦しそうに休む事が多くなります。検査は胸部X線検査やCT、呼吸機能検査を行います。特に呼吸機能検査が確定診断に必要で、大きく吸った空気を吐く時の速度が遅くなり吐き終わった後の肺の中の空気の残りも多くなっています。CTでは肺が破壊され空洞の様になる気腫性変化を多数確認できます。

肺は再生できないため肺を元に戻す治療はできません。症状に対して治療する保存療法が主になり、咳や痰を減らし気管支を拡げて空気の通りを良くするために薬物療法を行います。肺を効率よく働かせるための呼吸訓練も行います。進行すると体内の酸素が足りなくなるため、在宅酸素療法という家庭へ酸素を作る機械を設置して、酸素を補給する治療を行います。

COPDはタバコが無くなれば最も減少する疾患と考えられます。つまり喫煙さえしなければ怖がる事のない病気なのです。そのかわり一旦発症すると治らない病気でもあります。まだCOPDになっていない人は今タバコを辞めればこの先は安心、という事になります。