高齢者の虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)には以下の3つの特徴があります。(1)重症例が多い(それ自体が重症であるだけでなく、腎不全や貧血など色々な合併症を持っていることも原因)。(2)女性の比率が高い。(3)心筋梗塞を起こしても痛みを感じない無痛性心筋梗塞が多い(その結果、適切な治療を受ける機会を逸する)。

この心臓を養う冠動脈が狭くなり詰まる主な原因は、年齢、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)、糖尿病、高血圧および喫煙です。その中で年齢が最も影響が大きいと言われています。次に悪玉コレステロールで、この数値は海外だけでなく日本人高齢者でも下げた方が良いと考えられています。

糖尿病は、動物実験では食後血糖値が高いほど虚血性心疾患発症に影響することがわかっています。従って、2~3カ月の血糖の平均値であるヘモグロビンA1cだけでなく、食後1~2時間の血糖値も指標にして糖尿病を治療していく必要があります。

次に高血圧の影響ですが、「高齢者では動脈硬化が既に進行しているため、血圧を下げ過ぎると脳などの重要な臓器が血流不足になるのではないか」と考えられてきましたが、冠動脈内の破裂しやすい動脈硬化病変を徐々に小さくするためには上の血圧を120mmHg位に下げる必要があることがわかってきました。

最後に治療については、病変が重症で合併症の多い高齢者でも、心筋梗塞に対して「風船で冠動脈病変を拡げる治療(冠動脈インターベンション)」を受けることで、若い人の場合と同様に死亡率を著明に下げることが出来ます。