歩くと「ふくらはぎ」や「太もも」が痛み、休憩すると短時間で痛みが軽快する間歇性跛行(かんけつせい はこう)をご存知でしょうか。同症状が下肢の「動脈硬化による血流不足」で起こる場合、何百メートル等「ある一定の距離」以上を歩くことで再現されます。今回は、PADのうち、代表的な閉塞性動脈硬化症を中心に述べます。

PADの症状には動脈硬化の軽い順に(1)「無症状」、(2)「間歇性跛行」、(3)「安静時の下肢痛」、(4)「壊疽、潰瘍」があります。PADの75%は無症状ですが、日本ではこれが原因で毎年5,000人の患者が下肢を切断されています。

PADの主な原因として、年齢(40歳以上)、喫煙、糖尿病が最も重要視されています。発症5年後に症状が増悪する割合は10~25%程度ですが、間歇性跛行患者の5年後、10年後の死亡率はそれぞれ30%、50%でPADの無い集団の10%、20%に比べて極めて高いことが問題です。その死亡原因は、心臓血管合併症が75%と、下肢虚血以外によるものが殆どです。

PADは、四肢の血圧を同時測定(「血管年齢」を測定する器械を使用)し、下肢血圧が上肢血圧より低い(健常者では上肢より下肢血圧が高い)ことで診断します。この検査が推奨される対象は、(1)「歩いた時に下肢のうずきや痙攣を有する」、(2)「50~69歳で冠動脈疾患の原因(特に糖尿病と喫煙)を有する」、(3)「上記原因の状態に関係なく70歳以上」の人です。

治療方針は、冠動脈疾患の原因である糖尿病、高血圧、高脂血症の治療と禁煙で、間歇性跛行例ではさらに薬物療法と運動療法が追加されます。