味を知覚する器官である味蕾(みらい)は、舌の奥と側部に密集し、先端部で点在します。味蕾では5種類の基本味(甘味、苦味、塩味、酸味、うま味)を感知します。一昔前に言われていた、舌の先端で甘味、奥で苦味、側部で塩味・酸味を知覚する味覚地図は現在では完全に否定されています。一方で、味の感受性は個人差が大きい結果、食の嗜好も変わってきます。苦味の個人差は、遺伝的背景が原因の1つとなっており、従って、民族、人種によっても異なります。

さらに、体調も味覚に影響します。どなたも体調と味覚が連動することを実感されたことがあるように、味の感受性は同一個人内でも変動します。例えば、空腹時にはエンドカンナビノイドという物質が、脳に作用して食欲を促進させるとともに、味蕾にも作用して甘味に敏感となり美味しく感じさせます。一方、満腹になるとレプチンという物質が脳へ満腹信号を伝えて食欲を低下させるとともに、味覚にも作用して甘味を感じにくくさせおいしくなくなります。1つの物質が脳と舌の両方(少なくとも2ヵ所以上)で同時に食欲を調節している精巧な仕組みに驚かされます。