人間の細胞は歳をとるほど傷がつくことが多くなり、正常な細胞にもどす修復作業も忙しくなります。この繰返しの中で細胞の突然変異(遺伝子の傷)が生じ、「がん」が始まると考えられております。この勝手きままにに増殖する「がん」を防ぐ遺伝子が、各細胞の中にあることが近年わかってきました。

 環境中にはたばこ、紫外線、ウイルス、添加物など、細胞のなかの遺伝子を傷つける物質が多くあります。通常は、その結果で発生した「がんに近い細胞」や「がん細胞」自身を修復したり、その細胞を自殺させて(アポトーシス)、「がん」の発生が抑えられております。

 これまでに10種以上の抑制遺伝子が発見されておりますが、半数以上の「がん」に関係しているP53というたんぱく質が重要です。これは遺伝子にくっつき、それぞれのスイッチを入れ、修復またはアポトーシスを促すに必要なたんぱく質を作らせます。

 たばこは発がんさせ、それを増殖させる因子を持っているだけでなく、この重要な抑制遺伝子をも傷つけ、きわめて「がん」になりやすくさせる凶悪犯なのです。